第8章 Incomplete
その後、どんな理由があれど船を壊すなとこってりマルコに絞られた二人は、仲良く修繕の手伝いを始めた。青い空に並ぶ藍色と銀色を眩しそうに見張るレオーラをみて、マルコが隣から視線を送る。
「……あの子が来てもう一年になると思うと感慨深いよね」
「ジジイか」
「ええ……だって隠れてるエルを一発で見つけられるんだよ?」
「ま、覇気の使い方は達者になったと思うよい」
「身長も随分伸びたし、見てたらお兄ちゃんよりお父さんの気分になってくるよね」
「お前がオヤジを名乗るのは早い」
マルコの言葉にハハハと笑っていたレオーラが突然、一点をじっと見つめて真剣な顔をする。その様子にマルコも同じ方向を見るが、肉眼ではコバルトブルーの空と凪いだ海が見えるだけだ。
「……何かいたかい?」
「海賊旗を掲げた船が三隻。真っ直ぐこっちにむかってきてる。思い違いだったらいいけど、狙われてる可能性もあるかな」
「分かった。オヤジに報告しておくからお前は修繕してる奴等の片付け手伝いを頼む」
「了解」
マルコが船内に入っていくと同時にレオーラが澄んだテノールボイスを甲板に響かせる。
「皆、一度片付け!」
「え、どうかしたのか?」
「こっちに三隻の船が近づいてる。戦闘になったら邪魔だから一度片付けて!」
「了解! ほら皆急げ!」
エルトンも荷物を担ぎながら言うと、皆も後に続いて道具を仕舞い始める。その様子を横目に、レオーラは見張り台に上る。
(やっぱり進路変更はないな……さて、警告でどう出てくるか)
マントの内側から小型のバズーカを出すと、三隻の戦闘を行く船の進路に向かって一発打ち込んだ。大きく離れたところに着水すると、白い煙が立ちのぼる。すると、まるでお返しだとばかりに大砲の弾がモビー・ディックの数百メートル先で水柱を立てた。
その様子をみて、一気に甲板が騒がしくなった。向こうがやる気ならこちらも迎え撃つまでだと、各々の武器を手に集まるクルー達の後ろから、白ひげがマルコを従えて出てきた。
「レオーラ、敵は」
白ひげの言葉に、見張り台から声が降って来る。
「三隻! 見覚えのない旗だから最近新世界に来た子達かな」
「ハ、威勢のいいルーキーか」
ニヤリと笑った白ひげが甲板に出ているクルー達を見て口を開く。
「程々に揉んでやれ!」
「おお!!」
「なんだかこういうのも新鮮だなァ」