第7章 番外編 喧嘩するほど仲がいい
「何やってるのよ……」
呆れた顔で溜息を吐くと、フレイアはシャンクスの手を掴んで引いた。
「巻き込まれる前に離れるわよ」
「ああ……でも止めなくていいのか?」
「日常茶飯事よ」
もう慣れっこだとばかりにミランダの方へ逃げると、彼女は笑って救急箱を取り出した。言われるままに傷口を見せると、手際よく処置が施されていく。
「強くなったねフレイア」
「いつまでも皆に守ってもらってばかりじゃ嫌だからね。目標はお父さんを超えることです」
「ハハハ、頑張んな。シャンクスもやるじゃないか。フレイアが技を出さなかったら、自力はアンタの方が上だよ」
「ありがとう」
「ミーさん、それ心外」
ムッとした顔をするフレイアの頬に絆創膏を張って、軽く頭を叩く。
「自分の力量を見誤るんじゃないよ」
「……はーい」
頭を抑えながら返事をすると、フレイアは三人の様子を見に行くと言って立ち上がった。三人を取り囲んでるクルー達の中に入って行こうとして、ふと立ち止まると振り返る。
「シャン!」
「え、おれ?」
「まだ勝負はついてないからね!!」
刀をシャンクスの方へ向けながらフレイアはそう言って微笑む。それに対し、シャンクスも笑いながら応えた。
「当たり前だろ。負けねェからな」
その返答に満足したのか、フレイアは大人達の波の中に器用に入って行った。その背中を見送ってシャンクスが視線を戻すと、ニヤニヤ口許を緩めたミランダと視線が交わる。
「……おれの顔になにかついてる?」
「フレイアには父親が多いから大変だよ?」
「え……べ、別にそういうんじゃねェよ!?」
一瞬呆けた顔をしたものの、直ぐに言葉の意図を察してシャンクスが反論すると、ミランダは豪快に笑った。
「ま、仲良くやんな。あの子が愛称で呼んだってことは、アンタはもうあの子にとって大切な家族だって認められたってことさ」
「……それは嬉しいけど」
「アンタらが結婚できる歳には父親も何人生きてるか分かんないしね」
「だから違うって!!!」
シャンクスの必死な声とミランダの笑い声、喧嘩を囲む観衆のヤジが船に空にと響き渡った。