第7章 番外編 喧嘩するほど仲がいい
驚いて危うく戦闘中の二人に突っ込みかけた者は、すぐ隣をフレイアの刀が掠めて、慌てて輪の中に体を戻す。
「……あいつらが引き際を弁えてるか見ててやれ。よっぽどやばくなったらファイが間に入るさ」
「そ、そうですね……」
「ま、次の一撃で全部決まりそうだがな」
ギャバンの言葉にクルーが振り返ると、フレイアが強く地を蹴って踏み出した。
「……まだ未完成だったけど仕方ないわね」
ボソリとそう呟き、フレイアがファイに教わった構えをとる。
「シャンクスの後ろの奴等、気を付けろよー!」
上から降ってきたロジャーの助言に従って皆が動き出すのと、フレイアの攻撃が放たれたのはほぼ同時だった。全身の力をすべて剣先に乗せて広範囲を一度に斬りつける、ファイが露払いによく使用する最も基本的な技【湖月】
「及第点」
周りに被害が出ると判断したファイはそう呟くと上から【湖月】を放った。シャンクスの目の前でフレイアの斬撃が相殺されると、ファイはそのまま一階に飛び降りてきた。
「……で、どうだった? ウチの娘は」
珍しく放心しているシャンクスにファイが尋ねると、彼は「あー……」と気のない返事をしながら頬を掻く。
「その、ごめんなさい……」
「別に謝ってほしいと思ってない」
勝負を中断されたからか、あっさり相殺されたからか、不機嫌そうにそういうとフレイアは刀を鞘に戻してシャンクスに歩み寄った。
「でも、守ってもらわなくてもいいのはわかったでしょ」
「……ああ」
ようやく落ち着いたのか、シャンクスも武器を仕舞いながら応える。ファイが間に入らなければどうなっていたか、自分が取ろうとした対処は合っていたのか、今となっては分からない。
(でも……負けてたかもな)
「舐めたこと言って悪かった」
「分かればいいのよ」
ふっと笑みを零したフレイアを見て、シャンクスは「おお……」と言いながら視線を僅かに逸らした。そんな彼の様子に軽く首をかしげていると、ロジャーの笑い声が響いてきた。
「ファイ、殺気がダダ漏れになってるぞ」
「……うるせェ」
「子供相手にみっともないぞ」
「うるせェ!!」
レイリーの言葉に叫んだファイがそのままテラスの二人に斬りかかる。周りから悲鳴とヤジが飛ぶ中、第二戦が始まった。