第7章 番外編 喧嘩するほど仲がいい
「……で、なんでレイさんに呼び出されたら貴方がいるの?」
「いや、おれもファイさんに呼び出されただけ……」
翌日のお昼過ぎ。甲板で向き合った二人は居心地が悪そうに言葉を交わす。シャンクスの言葉を聞いたフレイアが大体ことの予想がついて顔を顰めた。すると、どこからか出てきたクルー達が二人を取り囲む。
「ようガキ共」
「船長……」
「……お膳立てどうも」
憮然とした表情で言うフレイアに、二階バルコニーに並んでいる三人が笑う。下にいる子供達よりよっぽど悪ガキといったその表情に甲板の端にいたミランダがやれやれと肩を竦めた。
「あのこれってまさか」
「……聞くまでもないでしょう」
シャンクスの言葉を遮るように口を開くと、フレイアが刀を構える。
「抜きなさいよ。まさか、ここまでされて出来ないなんて言わないわよね」
フレイアの口調にシャンクスはムッとした顔をしながら自分のサーベルに手をかけた。
「おーおー、フレイアの奴、相当頭に来てたみたいだな」
珍しく挑発するようなこと言いやがって、と言うレイリーにロジャーとファイは全力で首を横に振った。
「あいつ意外と性格悪いぞ。こいつに似て」
「おれじゃねェよ。あのクソジジイの隔世遺伝」
「否定しづらいとこついてくるな……」
「おれは挑発する前に切り捨てる」
堂々とそういうファイに「だよな」と同意を返すと、ロジャーは柵にもたれ掛かりながら階下をみた。
「さて、シャンクスのお手並み拝見といこうぜ」
「フレイアの成長具合もな」
「……始まった」
ファイが静かにそういうや否や、シャンクスの身体が後方のマストの柱に叩きつけられた。攻撃された本人が一番驚いた様子で咳き込む。
「……」
それを無言で眺めるフレイアの手には、鞘から抜かれていない刀があった。
「……抜いてたら殺せた」
「……はは、みたいだな」
冷や汗をかいて真剣な表情を見せるシャンクスに、やっとフレイアも僅かな笑みを見せる。
「私、弱いもの扱いされるの大嫌いなの」
喋りながらも一気にシャンクスとの距離を詰めようと踏み込む。しかし、油断しないと決めたシャンクスに一撃は難なく防がれた。
「もう絶対に弱いもの扱いしねェよ」
「出来ないの間違いでしょ」