第7章 番外編 喧嘩するほど仲がいい
「戦闘以来ねェ……あいつの邪魔でもしたのか?」
「してない、と思うけど……あんな小さい女の子がちょろちょろしてたから気にはしてたけど」
「……ふうん」
(小さい女の子ね)
世間一般的にはそうなってしまうのか、とファイはひとりごちる。反対する思いはあるが、自分からしたら娘であると共に弟子なので、戦闘には積極的に参加して成長してほしいというのが彼の方針だった。負けて、勝ってを繰り返して経験を積むほうが成長が早いと彼自身が経験的に知っているからだ。
「お前にとっては、あいつは守ってやらなきゃいけない年下の女の子か?」
「え、まァ……そうかな。危なっかしいし。ファイさんも親ならもう少し見てあげればいいのに」
「見てるさ」
少なくともお前よりはな、という言葉を心の中で付け加えてファイは軽く溜息を吐いた。
「シャンクス、明日の今頃に甲板に来い」
「え、何で?」
「いいから、それでフレイアが不機嫌な理由は分かる」
「……分かった」
「……というわけだ」
ファイの言葉に、ロジャーとレイリーは揃って納得したような顔を見せる。
「ま、フレイアは機嫌が悪くなるわけだな」
「シャンクスがそう思うのも仕方ねェが……ま、それが分かってるからフレイアの奴は『自分の問題』って言ってんだろうな」
「そういうことだ」
「で? シャンクス呼び出してどうするんだ?」
ロジャーがファイを見て笑うと、ファイは意地の悪い笑みを返す。
「ぶつかり合って深まってくのが信頼関係だろ?」
「はは、賛成だ」
昔の自分たちのように、とは言わずともその場の三人には分かっていた。
「じゃあ、親は親らしくお膳立てして見守ってやるか」
「さて、どっちが勝つと思う?」
「おれはフレイア」
「どうだろうな、今のままだとシャンクスが本気でやりそうにねェからフレイアが勝ちそうだが」
フレイア優勢そうな雰囲気にロジャーはいやいやと反論をする。
「戦いが長引いたらシャンクスに分がありそうだぞ」
「わからねェぞ? フレイアの奴、最近朝方ひとりで刀振ってるのをよく見るからな」
「え、おれ知らねェぞ」
「おれも」
不思議そうな顔をするロジャーとファイにレイリーが勝ち誇ったような顔をする。
「寝坊助共には一生見られねェ時間だよ」