第7章 番外編 喧嘩するほど仲がいい
「フレイア、ずいぶん遅いな」
「見張りのシフト入ってたの。船長たちは休憩?」
「まァな。今後の進路を決めてたんだ」
「そっか」
新しい島には何があるんだろうね、と目を輝かせる様子は何も普段と変わらない。やはり様子がおかしいのは対シャンクスにだけらしいとわかり、レイリーは口を開いた。
「シャンクスと何があったんだ?」
「……別に」
途端に不機嫌そうな顔でサンドイッチにかぶりついたフレイアを見て、二人は思わず吹き出す。
「分かりやすい奴だな」
「船長うるさい」
「喧嘩か?」
「……違う。私が一方的に怒ってるだけだから放っておいて」
「おれ達としては、お前達に仲良くやってほしいんだがな」
困ったような顔をするレイリーにフレイアは一瞬バツが悪そうな顔をしたものの、すぐに顔を背けた。
「同い年くらいの子供との接し方がわからないか?」
「それは特に気にしてない。子供でもなんでも結局皆んな海賊なわけだし……まだ見習いだけど」
「じゃあ、なにか言われたとか?」
「ノーコメント! もうなにも言いません!!」
勢いよく喉にサンドイッチをミルクと共に流し込むと、フレイアが席をたつ。
「フレイア」
「……私の問題だから」
ボソリと呟くと、皿を持って2人に背を向けていく。その様子に小さく息を吐くと、レイリーがぬるくなったコーヒーに口をつけた。
「結局おれ達も父親だったな」
「笑い事か。何も解決してないぞ」
「やっぱり放っておくのが一番じゃねェか? あいつも親に仲介してもらわないと仲直り出来ねェ年じゃねェだろ」
「もう2週間以上続いてるから心配してんだろ」
それに、と付け加えようとしてレイリーは口を噤んだ。
(あいつ、同年代と喧嘩するのなんて初めてだろうが)
父親であるファイが自分で育てると宣言してから、フレイアはずっとこの船で海賊に育てられてきた。ファイの決意を誰も止めなかったとはいえ、周りはお尋ね者の大人だらけのこの環境で、普通の子供が体験することないものばかり見せてきた。反対のこともまた然り……そんな彼女を心配している人間はレイリーを含め多少なりともこの船にいたのだった。
「ま、お前やミランダが心配してることも最もだが……」
何か言いたそうな相棒を見てロジャーはニヤリと笑った。