第6章 新しい家族
「圧倒的に足りないのは体力。技術で生きていける世界じゃない。女である君には酷かもしれないけど、パワーと持久力は必要なものだ。いくら君の剣術が相手の力や遠心力といった、自分自身以外の力を利用するものであってもだ」
「それは、分かってる」
船から落ちた時、自分の体力のなさを身に染みて実感した。体力配分に気を遣っているうちは思い切り戦えない。
「うん、じゃあ改善するように日々努力だね。メニューならいくらでも考えてあげよう」
「……」
「はは、自分で出来るって顔しないの。君は自分にも他人にも厳しいタイプだから、適当なメニューは組まないだろうけど……厳しくしてオーバーワークしそうだから」
「……はい」
不服ではあるが、彼の言うことは一理ある。彼のトレーニングが優しすぎかったら、自分で追加すればいいのだと思ってフレイアは小さく頷いた。
「うん、追加は認めないからね」
「……」
「僕の見聞色を舐めすぎ」
「……善処するわ」
「ふふ。じゃあ次に足りないものは経験。こればかりは若いから仕方ないね。覇気もまだまだって感じだし」
「教わり始めてから半年も経ったんだけどな……」
「は? 半年?」
「見聞色はね」
少し驚いたような顔をした後、レオーラが苦笑する。
「将来が楽しみというか末恐ろしいというか……ま、見聞色なら僕がいくらでも鍛えてあげるよ。武装色はエルかマルコにでも教わりな。僕も使えるけど、そんなにって感じだから」
「分かったわ」
「まだ若いんだから、生き急がなくていいんだよ」
「……強さが必要になるタイミングに歳は関係ないわ」
刀を撫でながら、そう呟いたフレイアにレオーラは「そうだねェ」と同意を返しながら空を見上げる。
「でも、気負いすぎなくていいんだよ。この船に乗ってるのは家族なんだからね」
「家族、ね」
「オヤジに抱きつきにでもいく?」
「白ひげが驚かない?」
「その呼び方禁止」
フレイアの頭に肘を乗せながらエルトンが言う。その背後から、ビスタと救急箱を持ったマルコも近寄って来る。
「禁止されても困るんだけど」
フレイアがマルコに怪我をした腕を差し出しながら困ったように眉を顰めると、エルトンは不思議そうに首を傾げた。
「え、オヤジでいいじゃん」
「私にはお父さんがいるから混乱するのよ……」
「いや、お父さんとオヤジは別でしょ」