第19章 月花
「さえり、さえり、大丈夫か?」
自分を呼ぶ心配そうな声に、目が醒める。声のする方に目をやると、心配そうな顔で光秀が覗きこんでいた。
ふふっ、とさえりは笑みをこぼす。
あんなに激しくしておいて、心配そうな顔をするなんて、可愛い、と思ってしまう。本人には絶対言えないけれど。
「大丈夫です……」
光秀越しに星空が見える。さえりは花畑で着物を整えられ、仰向けに寝かされていた。
起き上がろうとすると、光秀が手を引いてくれた。思ったよりも身体がダルい。外ということで緊張もあったのかもしれない。
光秀にフワリと抱きしめられた。温かくてほっとする。
「寒くないか」
「はい。光秀さんが抱きしめてくれるから」
「そうか」
暫く二人は抱きしめあっていた。
少し月の位置が動いた頃。
「帰れそうか?」
「はい」
二人は手を繋ぎ、花畑を後にした。
花々が風に揺らめく。
満月は静かに花畑を照らし続けていた。