• テキストサイズ

きつねづき ~番外編~

第18章 覚悟


「さえりはまだ目を醒まさんか」

軍議の場で、信長が問うた。その場に光秀の姿は無い。

「はい。もう見ていられません。さえりだけでなく、光秀さんも……」

徐々にやつれていく二人を思いだしながら、家康は厳しい表情で報告する。

「明日中に目を醒ましてくれないと……」

その先の言葉を口にすることは無かったが、その場にいた全員が厳しい顔をしていた。






今日も1日が終わってしまう。光秀は少し焦っていた。

もし、このまま目を醒まさなければ……

「さえり……頼む、目を開けてくれ」

そして微笑んで名前を呼んでくれ

握った手に力を込める。

暫くすると、家康が診察に来た。

「傷は良くなってます。後は、目を醒ますだけなんですけどね……」

家康がため息をつく。

「光秀さん」

少し迷うような表情をした後、家康は意を決して光秀を見た。

「言いたくは無いですけど……明日中に目を醒まさなければ、覚悟も、しておいた方がいいかもしれないです」

覚悟?

家康の言葉に光秀は反応した。

「何の、覚悟だ」

光秀は思わず家康の襟を掴んだ。

「言わせたいんですか? さえりを心配しているのはあんただけじゃない」

暫く睨みあったあと、光秀は家康の襟を離した。悪かったという思いはあるが、言葉にする元気もない。

再びさえりの手を握る。

「あんたも、一応病人なんですから、寝ていてください」

家康はそれだけ言うと、襟を整え静かに部屋を出ていった。

/ 254ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp