第18章 覚悟
「さえりはまだ目を醒まさんか」
軍議の場で、信長が問うた。その場に光秀の姿は無い。
「はい。もう見ていられません。さえりだけでなく、光秀さんも……」
徐々にやつれていく二人を思いだしながら、家康は厳しい表情で報告する。
「明日中に目を醒ましてくれないと……」
その先の言葉を口にすることは無かったが、その場にいた全員が厳しい顔をしていた。
今日も1日が終わってしまう。光秀は少し焦っていた。
もし、このまま目を醒まさなければ……
「さえり……頼む、目を開けてくれ」
そして微笑んで名前を呼んでくれ
握った手に力を込める。
暫くすると、家康が診察に来た。
「傷は良くなってます。後は、目を醒ますだけなんですけどね……」
家康がため息をつく。
「光秀さん」
少し迷うような表情をした後、家康は意を決して光秀を見た。
「言いたくは無いですけど……明日中に目を醒まさなければ、覚悟も、しておいた方がいいかもしれないです」
覚悟?
家康の言葉に光秀は反応した。
「何の、覚悟だ」
光秀は思わず家康の襟を掴んだ。
「言わせたいんですか? さえりを心配しているのはあんただけじゃない」
暫く睨みあったあと、光秀は家康の襟を離した。悪かったという思いはあるが、言葉にする元気もない。
再びさえりの手を握る。
「あんたも、一応病人なんですから、寝ていてください」
家康はそれだけ言うと、襟を整え静かに部屋を出ていった。