第16章 密会
光秀と会えなくなって一体何日が過ぎたのだろう。1日がとても長くて、今までどうやって過ごしていたかさえ思い出せない。十数日しか経っていない筈なのに、何ヵ月も何年も会っていない気さえする。
「はぁ……」
さえりは今からこんな状態で自分は大丈夫かと不安になる。何も教えて貰えなかったけど、今回は恐らく難しい仕事で、今後もこんなことはちょくちょくあるのだろう。
寂しい
逢いたい
言葉にしてしまったら挫けそうで、さえりは必死に飲み込み唇を噛む。
光秀を怪しむ噂は相変わらず絶える事はなく、さえりの耳まで入ってきていた。それを聞く度に心を痛める。
たぶん今夜も眠れなくて月を眺める事になるのだろう。
光秀が仕事を終える日を心待ちにしながら、さえりは寂しさを紛らわすかのように、針子の仕事を始めようと、針と生地に手を伸ばした。