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きつねづき ~番外編~

第15章 欲しいもの


「あれ……?」

朝、目が醒めたさえりは何故自分が安土城の部屋で寝ているのかわからず、首を傾げた。

「確か、宴の途中で……?」

思い出せない。

とりあえず、のそのそと褥から這い出し身支度を整える。襖を開け、太陽を浴びて伸びをする。

そこへ信長が通りかかった。

「信長様、おはようございます」

信長はニヤリと笑うとさえりと距離をつめた。

「さえりか。昨日は面白いものを見せて貰った。これからもせいぜい励め」

「え?」

「それから書簡は問題なかったから今日は城に来るなと光秀に伝えておけ」

そのまま笑いながら去っていった。

「何……?」

さえりが混乱していると、秀吉と三成がやってきた。

「さえり、おはよう」

「さえり様、おはようございます」

「秀吉さん、三成くん、おはよう」

挨拶を交わす。

「さっき信長様が面白いものを見せて貰ったとか変なことを言ってたんだけど……私、昨日何かしたかな?」

さえりの質問に、秀吉と三成は顔を見合わせた。

「あー、あれな、確かに意外だったな」

「さえり様、宴の時の事、覚えてらっしゃらないのですか?」

「えっ」

さえりは不安になる。

「あれ覚えてないとか、ちょっとどうかと思う」

秀吉の後ろから家康が顔を覗かせた。続いて政宗も姿を見せる。

「上手いこと光秀をのりこなしてるんだな。その手腕、見直した」

ニヤニヤしながら政宗が言った。

さえりは焦り始めていた。一体私は何をしてしまったのだろう? しかも皆の口振りからすると光秀さんに何かしてしまったような気がする。

「私、光秀さんに会ってくる!」

さえりは駆け出した。

「こら、廊下は走るな」

「ごめんっ」

そう言いながらも速度をゆるめず、さえりは走り去っていった。

「お前ら、からかいすぎだ」

「そう言う秀吉こそ。答えを教えてやらなかった癖に」

「まあな。外野がとやかく言うより絆が深まるだろ」

「そしてまた見せつけられる訳ですね……」

「仲睦まじいのは良いことですが、少し妬けますね」

宴で見た、光秀の照れた顔。

滅多に見られないだろう珍しいものをみた武将達は、ニヤニヤしながらさえりが去っていった先を見つめていた。

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