第13章 視線
安土城の薄暗い天井裏を、佐助は静かに進んでいた。偵察等に使うための、いつものルート。もう慣れたものだ。
今日はさえりに会って近況報告をする約束をしていた。
さえりに会うのは光秀と恋仲になったと聞いて以来だ。元気かな、と思いながら天井裏を進む。
もうすぐさえりさんの部屋だな、と思ったその時。
「ん……んふっ……」
「?」
さえりの声が聞こえる。
確かにさえりさんの声のはずだけど、声がこもっている。どうしたのだろう?
佐助は不思議に思いながら、隙間から部屋を覗く。
部屋の中ではさえりと光秀が座ったまま抱き合い、さえりが揺れていた。さえりは光秀の肩に顔を埋めて声を抑えているようだった。中途半端に乱れた着物から脚が覗き、動いている。
あ、これはまずい
佐助はすぐに二人が愛し合っている事に気づく。
日を改めようと思った。見なかった事にして、踵をかえそうと視線を逸らす。
「あっ……光秀、様ぁ……」
光秀『様』? 君は光秀『さん』と呼んでいなかったっけ?
違和感に、思わず視線を戻してしまった。
「イきそう、です……」
「まだだ。少し我慢しろ」
「うぅ……はい……」
二人は動きを止めた。光秀はさえりを焦らしているようだった。さえりがもじもじしている。
「光秀様……お願い……」
「イきたい……」
「イかせて、下さい、お願いします……」
さえりが赤い顔で泣きながら懇願している。
揺れそうになる腰を光秀が押さえつけ、さえりの頭を肩に引き寄せる。
なんてエロイんだろう
佐助がそう思ったその時。
光秀が天井を振り仰いだ。
「!」
ガバッと体を起こす。
目が合った? 気付かれている?
急に移動するのは逆にまずいか? と息を潜める。
「あっ……はあっ……んん……」
さえりの声が再び聞こえ始める。
それを合図に、佐助は静かにその場を後にした。