第13章 視線
安土城にある自分の部屋でさえりは本を読んで過ごしていた。今日は佐助くんが遊びに来る予定だ。時々会ってお互いの近況報告をしていた。
楽しみだな、とさえりが考えていたその時、外から声がした。
「さえり、入るぞ」
襖を開け、光秀が入ってきた。
「光秀さん。もうお話は終わったんですか?」
朝一緒に登城した後、信長様に用があると光秀は天主へ向かっていった。
「ああ。暇になったから、更に暇をもて余して腑抜けているだろうお前の顔を見に来た」
「もう! 言い方!」
「お前に逢いたくて。これでいいか?」
「……もう」
何と言われようと、少しの時間でも逢いに来てくれた事が嬉しくて仕方がない。今朝まで一緒に過ごしていたはずなのに。自分でも重症だな、と思う。
「本を読んでいるのか」
光秀が後ろから覗きこむ。光秀の顔が近くてドキドキする。
「はい。活字に慣れようと思って」
「そうか。わからない所は質問するといい。報酬次第で教えてやる」
「無料じゃ教えてくれないんですね……報酬は何がいいんですか?」
「口づけでどうだ」
「それなら……」
二人は口づけをかわす。段々深くなっていく。
着物の袷から、光秀の手が侵入してきた。さえりの胸を揉みしだく。
「んんっ……」
蕩けそうになりながら、はたとさえりは思い出した。これから佐助くんが来るんだった。
光秀の肩を押す。
「どうした」
しかし光秀の手は止まらない。胸だけでなく、秘部にものびてきた。
「ここ、お城、だし、あんっ、まだ、明るい、し、はあっ」
佐助くんが訊ねてくるし、とは言えない。友人とは言え仮にも敵の忍者。町中で会うならともかく、安土城はまずい。
「止める理由にはならないな」
光秀がニヤリと意地悪く笑う。
「こっちの方は悦んでいるみたいだぞ」
ぐじゅ、と秘部から卑猥な音が聞こえた。
ああ、駄目、なのに……
頭のスイッチが切り替わる音が聞こえた。
『さん』から『様』に変わる瞬間、だ。
逆らえなくなる
「はぁ、光秀様……」
ぎゅっと光秀の着物を掴む。
さえりは願った。
お願い、佐助くん、今日は来ないで――