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きつねづき ~番外編~

第35章 毒


◆◇◆◇◆◇

家康はいそいそと天幕を出ていくさえりを見送った。

「拗ねたんですかね?」

「さあ……?」

不自然なさえりの行動に首を傾げる。光秀も同意するかのように呟いた。

「家康」

名を呼ばれ振り向くと、光秀が神妙な面持ちでこちらを見ていた。

「俺は、さえりを誰にも渡す気はない」

「……知ってますけど」

何をいまさら、と思う。わざとらしい程にさえりとの仲を見せつけていたのは、虫除けのためではなかったのか。

「だが……」

光秀は一呼吸置いて、ゆっくりと息を吐く。

「万が一、俺に何かあった時は、お前にさえりを託したい」

「……は?」

急に何を言い出すのか。意味が分からない。真意を探ろうと光秀の顔を窺う。しかし冗談を言っているようには見えなかった。

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