第35章 毒
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思わず天幕から逃げてしまった。
ギュッと空の湯呑みを握りしめる。
武将としての光秀さんは強い。
だけど毒に侵され、病床で朦朧としながら私の名を呼んだのも確かにあの人で。
男の人って本当に弱い。
でも、あんな風に求められたら、必要とされたら。
ああ、この人と添い遂げるんだなって。
もとよりそのつもりだけど、改めて再確認をした。
――愛してる。
こんな時に、こんな事を考えてしまう。でも、こんな時だからこそだとも思う。
私は駄目な女でしょうか。
記憶が無い? それって最高。
だって、無意識でも私を必要としてくれているって事だもの。
最高の、殺し文句。
相変わらず、ずるい人。
でも愛しい人。
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