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きつねづき ~番外編~

第35章 毒


◆◇◆◇◆◇

家康が大急ぎで光秀の元に到着した頃。戦況は敵味方入り乱れての混戦になっており、光秀の隊が僅かに押されているようだった。

「光秀さん!」

「家康か、助かる」

光秀が敵の攻撃を交わしながら、家康の呼び掛けに応じる。その短い言葉に、切羽詰まっていることがわかった。

家康の部隊は直ぐ様加勢した。家康と光秀は互いの背を合わせ次々に敵をなぎ倒していく。劣勢ではなくなったものの、勢いづいた敵は手強かった。

「埒があきませんね」

中々減らない敵の数に、家康がぼやく。その時、ある一点を気にしながら戦っていた光秀が、唐突に言葉を投げかけた。

「家康。見つけた」

一瞬視線を合わせ、互いの意図を汲み取る。

「了解」

光秀が馬に飛び乗り銃を構えた。照準を合わせ微動だにしなくなる。その姿を見た敵が好機と捉え光秀めがけ襲いかかって来た。

「隙あり!」

「冗談でしょ」

家康は光秀の前に立ち塞がり、斬りかかってきた敵をなぎ倒す。その姿を見た敵の1人がこちらの策略に気付いたようで、後ろに回り込み光秀に飛びかかった。

「させるかぁ!」

「こっちの台詞!」

クルリと向きを変え、光秀に向けられた凶刃を家康が受け止める。そしていとも簡単に敵を切り伏せた。

「もう面倒だから纏めてかかってきなよ」

家康の挑発に乗った敵が、次から次へと襲いかかってくる。家康は光秀に指一本触れさせるものかと、背に庇いながら刀を振るう。その姿は華麗で、敵でさえも目を奪われる程だった。

「はぁ、はぁ……」

流石に家康が肩で息をし始めたその時。


ズガァーーーン


発砲音の後、一瞬、戦場が静寂に包まれた。

敵味方共に何が起きたのかわからず、動きが止まる。

「御館様ぁ!!」

静寂を破るように、敵陣から悲鳴が聞こえた。

光秀の銃から放たれた銃弾は、敵の将を見事に撃ちぬいていたのだ。

将を失った敵は総崩れとなり、やがて蜘蛛の子を散らすように撤退していった。

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