第33章 あなたがこの世に生を受けた日 <彼目線>
翌日。さえりが針子の仕事で城へと出掛けた後、自室で文を書きながら九兵衛が戻って来るのを待っていた。
(そろそろ戻ってきてもいい頃だ)
九兵衛なら、あの程度の事後処理はすんなりとこなす筈だ。そう考えていた時、足音が聞こえてきた。
「光秀様、ただいま戻りました」
「御苦労だった、九兵衛。で、どうだ?」
「はい、滞りなく完遂致しました」
九兵衛の言葉に頷く。さらに九兵衛が続けた。
「光秀様が戻られたら、今回の事の顛末を報告するようにと、信長様より言付かっております」
「分かった」
(不在期間が延びてしまったからな)
何時もなら、こそっと謀反の芽を摘んで終わりにするのだが、今回は気づかれてしまったらしい。
仕方なく城へと向かった。