第30章 海
「そっか……ありがとう」
光秀さんと同じ様なことを言うんだな、と思いながら、さえりは秀吉にお礼を告げる。何処に現れるかはわからないのであれば、市にいるかもしれない。さえりは市に行ってみることにする。
「私、ちょっと市まで行ってくるね。またね、秀吉さん」
「あ、ああ、気をつけてな。あまり遅くなるんじゃないぞ!」
「はーい!」
手を振って秀吉と別れた。
さえりは市の店を一つ一つ丁寧にまわっていた。
「花火ありますか?」
「悪いなお嬢さん。花火は置いてないんだ」
「そうですか、ありがとうございます」
そんな会話を幾度も繰り返しながら市を練り歩く。もう何軒回っただろうか。最後の店に望みをかける。その店は城にも出入りする珍品中の珍品を扱う店で、さえりは最も期待を寄せていた。
「悪いなお嬢さん。さっき最後の2本が売り切れちまったよ」
「えぇそんなぁ。次いつ入荷しますか!?」
「わからないねぇ」
申し訳ないと言われ、肩を落とすしかなかった。
「残念だけど、次の機会かな」
はぁ、とため息をつきながらさえりはとぼとぼと帰路についた。