第28章 尾行
それから数日間は尾行の日々が続いた。本来の目的はまだ達成されていなかったが、光秀の仕事ぶりを直接見れる事はさえりにとって貴重な時間になっていた。
とはいえ、光秀が浮気相手をとっかえひっかえしてるだの、さえりに愛想をつかされ自棄になってるだの、あらぬ噂が広まり続けており、早く解決しなければという焦りもあった。
「いけない、遅くなっちゃった」
その日は、思ったより支度に時間がかかってしまい、さえりは大急ぎで城下へ向かった。
城下へ到着して暫くすると、向かいから千与が走ってくるのが見えた。
「さえりちゃん!」
千与はさえりの側まで来ると、膝に手をついて上がってしまった息を整える。
「千与ちゃん、そんなに慌ててどうしたの」
「はぁっはぁっ……、見つけたよ、あの娘! 今、光秀さんと話してる!」
「えっ」
さえりは千与の言葉を聞き終えると同時に駆け出していた。千与が指をさした方へと大通りをひた走る。
一体、どんな娘なんだろう?
ドキドキと心臓がうるさい。
信じてない訳じゃない。このドキドキは緊張でも不安でもなく、走っているせいだ。きっとそうだ。
さえりは胸に手を当てながら、人波をかき分け走った。
……見つけた。
遠くに、他より頭一つ分背が高い人物。見慣れた横顔。
側に居るのは。
目がクリクリで髪は短めで、編み込みをしていて……
薄桃色の髪色の……?
「あっ、さえり様ー!、久っしぶりっ」
「蘭丸くん!?」
さえりは膝から崩れ落ちた。