第28章 尾行
次の日から安土ではまことしやかに噂が流れていた。
それは、光秀が浮気をしており、さえりが泣きながら光秀を見つめている、というものだった。
「なんか、おおごとになってない……?」
噂を耳にしたさえりは戦々恐々としていた。何故こんなに早く噂が広まってしまったのか。それに尾行は浮気ではない事を確かめる為で、泣いてもいない。尾ひれが過ぎる。
「まさか……」
思い付くのは、光秀自身が噂を広めたという事だ。でも、一体何のために。
とにもかくにも、早く解決しないと余計に事態が悪くなりそうだ。さえりは急いで立ち上がり、慌てて部屋を出ていった。