第28章 尾行
その後も暫く光秀の後をつけていたが、今のところそれらしい人物は見当たらない。
そのまま尾行を続けていると、歩いていた光秀がスッと角を曲がるのが見えた。
さえりは慌てて物陰から飛び出し、光秀が曲がった場所まで走る。角からそっと覗いたが光秀の姿は見えなかった。
「あれ?」
辺りをキョロキョロと見渡すが全く見当たらない。見失ってしまったようだ。まるで狐につままれたような気分になる。しかしホッとしたのと同時に、罪悪感に苛まれた。
「何やってるんだろ、私……」
はぁ、とさえりは一つため息をついた。
「見失ったのか?」
「はい。さすが光秀さ……え!?」
後ろから投げかけられた質問に答えかけたさえりは、聞き覚えのある声に心臓が飛び出るかと思った。おそるおそる声のした方を振り返ると、ニヤリと笑みを浮かべた光秀がそこに居た。
「み、み、み、光秀さん……!」
「なかなか楽しそうな事をしているな。手伝ってやろうか?」
「け、結構です……! 本人に手伝って貰うなんて聞いたこと……あっ」
思わず口を滑らせたさえりをみて、光秀は益々笑みを深める。
「詳しく聞こう」
光秀にさりげなく手を取られ、指を絡められる。さえりはガックリとうなだれたまま、手を引かれ光秀の御殿へと連れられていった。