第26章 雷
そのまま二人は褥に倒れこむ。
「五感と、後一つあったな」
「え……?」
光秀がさえりの胸元に口づけて、強く吸い上げた。赤い花びらが舞う、その場所は心臓がある辺りだ。
「心、だ。お前の全てを俺に」
きゅ、と心臓が音を立てた気がした。
「頭の天辺から爪先……心に至るまで、私は貴方のものです」
「ああ。そうだな」
身体中に光秀の甘い口づけが、雨のように降ってくる。
「ついでに言えば、俺もお前のものだ。もう、切り離せないからな」
二人で一つ。離れることなどできはしない。
身体だけでなく心の奥底の熱まで掻き立てられる気がする。心から光秀を求めて身体が悲鳴をあげる。
「さえり、どうされたい?」
「……欲しいです……私も、貴方の全てが」
「わかった」
切なさを秘めた甘く低い声がする。
光秀のそそりたつ熱の塊が、さえりの止めどなく溢れる熱の入口にあてがわれる。グッと割れ目を開かれ奥を目指して突き進んでくる。
「あっ……ぁ、あ……ああっ……!」
「さえり……っ」
心地よい振動が、さえりを揺さぶる。触れている箇所が熱くて熱くてどろどろに溶けていく。そうして次第に二人の境界線はなくなっていく。
光秀の熱い吐息が途切れ途切れに耳をくすぐる。
「仮に……『わーむほーる』が、現れたとしても、必ず、俺が、繋ぎ止める。お前を離しはしない」
「あぁっ……光秀様が……安土を、離れているときは……?」
「すぐに、飛んでくる」
「はぁ……あぁ……もし、吸い込まれてしまったら……?」
「先回りして、つかまえてやろう」
そんな事、無理な筈なのに、信じられる気がする。光秀ならできると、思わされる。
例え天でさえも、二人を引き裂く事など出来ないと。
「だから、不安になることなど、一つもない」
「……はい、光秀様……」
狂おしいほどに愛しくて、苦しくて、嬉しくて、気持ちが良くて、涙が溢れた。