第25章 ただいま
「そこまでだ! 光秀!」
勢いよく開いた奥の襖から姿を見せたのは――
苦虫を噛み潰したような表情の秀吉と、必死で笑いを堪えている政宗だった。
「俺の御殿で何をしている? 秀吉、政宗、暇なのか?」
さえりとの時間を邪魔され僅かに眉が寄る。
「お前の為に集まったんだろうが! さえりの発案でな!」
秀吉と政宗に続き、家康、三成も姿を現す。
「だから俺は『さぷらいず』とか反対だったのに……」
「お帰りなさいませ。光秀様。ご無事で何よりです」
「家康、三成……」
ブツブツ文句を言いながら部屋に入って来る家康とは対照的に、三成が労いの言葉を述べる。
「光秀。報告より先にさえりとは良い度胸だ」
奥の方で脇息にもたれながら信長が笑みを浮かべる。
「信長様まで……」
光秀は目を見開きながら押し倒しかけのさえりを見た。
「だから待ってって言ったじゃないですか……!」
腕の中で赤い顔をしたさえりが怒っている。その姿さえ可愛いと思うのだから重症だ。
「お前が今日帰って来るからと、お前の御殿で宴を開く事にしたんだ。さえりがお前を驚かせようと皆に頼み込んでな。だから奥に隠れていたんだ。それがどうだ、お前ときたら信長様に報告もせず……!」
「秀吉……あまり怒るとシワが増えるぞ」
「誰の性だと思ってるんだ! 話を逸らすな!」
激怒する秀吉を無視して、光秀は身体を起こし、さえりの手を引き座らせる。
「仕方がないな。さえり、もう暫くおあずけだ。残念だろうが夜まで少し我慢しろ」
「私ですか……!?」
自分の性にされたさえりは納得がいかないという表情を浮かべた。
「違うのか?」
光秀はさえりの耳に息を吹きかけながら囁いた。