第24章 誘惑
勢いよく押し倒された時に当たったのか、空になった湯飲みが倒れ、ころころと転がる。
そんな事はお構い無しに、二人は深い口づけを貪る。角度を変え、何度も口づける。
「誘惑、できましたか……?」
「まあ、合格だ」
しゅるり、とさえりの帯を解いていく。
「料理も逢瀬も口づけも良かった。ずっと俺は誘惑されていた。……最初からな」
最初から。それはこの3日間の事についての言葉だった。だが、もしかしたら、出逢ったその日から。ずっと誘惑されているのかもしれない。
「本当ですか……」
「嘘だと思うのか?」
その間にもさえりの着物ははだけさせられ、肌が暴かれていく。光秀も着物を脱ぎ捨てた。これでやっと肌を重ねられる。
さえりは光秀の目をじっと見つめた後、ニッコリと微笑んだ。
「いいえ。嬉しいです」
さえりは手を伸ばし、光秀の背に腕を回して引き寄せた。
また唇が重なる。
永遠に飽きる事のない口づけを繰り返しながら、光秀はさえりを強く抱きしめた。