第24章 誘惑
光秀はさえりの首筋に舌を這わし、鎖骨を舐めあげた。強く吸い紅い花びらを付ける。
「ん……あんっ……」
さえりの口から吐息が漏れる。上気した紅い顔をみて、光秀はふと思いだした。
「そういえば、三成に何か言われて頬を染めていたな。何を言われた」
「見てたんですかっ!?」
「少しな」
「何も、たいした事は……」
明らかに動揺するさえり。光秀はさえりの両手首を片手で拘束し、脇腹に手を這わせた。
「ひゃっ! くすぐったい、あはは、や、やめ、やめて、光秀様! あははっ」
さえりが身体をくねらせる。
「言わないと続けるぞ」
「あは、はっ、言います! 言いますから!」
光秀は手を止めた。さえりは息を整える。
「えっと、三成くんに……あっ、う……」
さえりが三成の名前を出したとたん、二の腕を甘噛みされ、強く吸われた。紅い印が付けられる。
「続けろ」
「異性の惹かれる仕草を聞いたら……あんっ」
光秀の舌がさえりの胸元を這う。
「一生懸命働く姿は好きですよって……ああっ!」
一瞬、乳首を食まれた。
「ほう……それで頬を染めたと」
「ごめんなさい」
光秀の低い声に思わず謝罪の言葉が口をついてでた。
「謝るという事は何か後ろめたい事があるのかな?」
「違います! 無いです! そんなの…」
慌てて否定する。
「仕置きが必要かな」
「違うって言ってるのに……! 私が愛してるのは光秀様だけです!」
「知っている」
さえりは唖然とした。
「なら、何で……」
光秀は拘束していたさえりの手首から手を離し、さえりの頬を撫でた。
「……俺も、嫉妬ぐらいする」
「う、そ……」
初めて光秀の口から聞いた気がする。嫉妬、という言葉。
「人を何だと思っている。そんなに仕置きされたいのか」
光秀はため息をつく。
「お前の事になると、俺は了見が狭くなるらしい」
ちゅ、とさえりの唇に口づける。
「だから、泣くな」
さえりの瞳から一筋、涙がこぼれ落ちた。光秀はそれを指で拭う。
「これは……嬉し涙です」
嫉妬してくれた事が、それを伝えてくれた事が、嬉しくて。
「だろうな」
「何でもお見通しですね」
そう言ってさえりは笑った。