第24章 誘惑
「あー、そういう事か」
政宗が興味津々の表情でさえりを見遣った。
「さえりが三成を誘惑してたのか」
「違うよ!」
即座に否定する。
「じゃあ光秀を誘惑する時の参考にでもするつもりだったのか」
「……」
さえりは思わず言葉を詰まらせてしまう。
「なんだ図星か」
政宗は少し驚いた後、ニヤリと笑った。
「意外と積極的なんだな、さえりは」
「ち、違っ、そういうわけじゃ……」
「いい事じゃないか、素直になれよ」
さえりをからかいながらも、政宗は少し考える。
「男を誘惑するには手料理を振る舞うってのが王道だが、光秀には通じないかもな」
「手料理かぁ」
効率だけを考えて何でも混ぜて食べてしまう味音痴の光秀には一見愚案と言わざるを得ない。しかし。
「ありかも、しれない」
戦国時代にはあまりない、現代風の食べ物なら、もしかしたら。
「ありがとう政宗。ちょっと考えてみる」
「おう、礼なら……」
「口づけはしないよ!」
「残念。まあ頑張れ」
政宗のいつもの言葉を遮ったあと、さえりは隣にいる三成に向き直る。
「三成くんも相談に乗ってくれてありがとう」
「お力になれたかどうかわかりませんが、解決なさったようでなりよりです」
二人にお礼を告げ、さえりは再び悩みながら廊下を歩き去った。