第4章 冬の黄葉
旺季さまの屋敷の近くの山に行き、そこの薬草で兄さまと自分の薬の調合をする日課をこなしていたところ、不思議な空気の人?がいた。
目があったその人?はおじいさんなはずなのに、時折ブレて若い男の人になる。
その後ろでぼやけるのは人型の何か。
見ようとしてはいけない、と直感が告げる。
しかも。
その人の周りにひらひらと黄金色の銀杏が散る光景まで見える。
今は雪がうっすらと積もる初冬だから、実際の風景でない事は確かだ。
梨雪は唖然として何回か目を擦った。
「……………綺麗な黄葉ですね」
何と声を掛けようか、若しくは無視するべきなのか迷った挙句に梨雪が選んだのは、何ともズレた感想だった。
おじいさん?は目をパチクリさせたかと思うと、梨雪の額に手を当て、その瞳を細めて暫く。
面白そうに口角を上げ、懐かしむように口を開いた。
「………紫陽花の残り香、か」
そう呟いたおじいさん?は梨雪の額から手を離し、瞬き1つ。
ブレて見えていた青年?に変化した。
「嬢ちゃん、名前は?」
驚きつつも「梨雪」と名乗り、恐る恐る名前を聞き返せば、青年?は面白そうにくつくつと笑う。
「黄葉だ。黄仙の黄葉」
こうせん?
ーーー光線
ーーー交戦
ーーー好戦
ーーー工船
ーーー香煎
「黄仙?彩八仙の、黄仙??」
大変混乱している梨雪に、若い姿に相応しく青年?は、にやっと笑った。
「で、わしは葉棕庚」
再び瞬き1つでおじいさんに戻った彼?は、再度自己紹介をする。
唖然呆然としていた梨雪は、ふと、葉棕庚と自己紹介した人物を二度見した。
「葉棕庚!……先生?医仙の!?」
彼?の正体など放って、梨雪は詰め寄った。
「薬学を教えて下さい!!」
1つ頷いて弟子入りを許可してくれた師匠(大変妙な顔をされた)にくっ付き、質問を重ね、知識と技術を教えてもらい、学んで、覚えて、覚えて、練習して、
約半年。
漸く解毒薬が完成した。