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《彩雲国物語》花より翼

第3章 幸せな時間


とりとめもなく思考に耽っていた僕は、袖を引く小さな手に意識を戻した。

「兄さま、お食事の時間です。飛燕様が、兄さまを呼んできてとおっしゃっています」

僕は梨雪に笑いかけ、杖を持っていない左手を差し伸べる。

「ごめん、行こうか」

「はいっ、兄さま!」

ふわっと浮かべる花のような笑みは年相応で、本をめくっている時とか、薬を調合している時とは別人だな、とつくづく思う。

僕は、小さな梨雪の手を引きながら、ゆっくりと庵と旺季様の屋敷を繋ぐ短い渡り廊下を歩いていった。
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