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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第10章 幻影少女



「…母親も娘だと思うほど、似ているんだなミス・アメリアに。しかし、確かに死んだと彼女は言っていたぞ」

「うむ……あの母親は嘘をついてはいるようには見えない。…父親にも、確認を取らねば」

「そうだな」


2人は引き続いて、父親との面会に向かった。


父親の方は、クラウス達の前に先客があったらしく、黒いキャップを被った男が出て行った後にクラウス達が入る形となった。


(スティーブン、今面会に来ていた男の調査を)

(もちろん、手配するさ)


目だけでクラウスとスティーブンは会話を成立させ、父親との対面に臨む。


「俺に何の用だ? 知り合いじゃねぇよな」


父親は初めからクラウス達に対して不信感をあらわにしていた。

クラウスは、母親の時と同じように、まず自己紹介から始めた。

「初めまして。クラウス・V・ラインヘルツと申します」

「…クラウス・V・ラインヘルツ? アンタがあの、ライブラのリーダーか。……となると楽しい話じゃなさそうだな。何を嗅ぎまわってる? 恨みを買うばっかりだってのに、物好きなヤツだ」

混沌の街、ヘルサレムズ・ロットにおいて、秘密結社ライブラの存在は、半ば公然の“秘密”となっていた。

世界の破滅を望むもの、己の勢力拡大を目論むもの、魔術に等しい存在の異界の物や者を使って利益を得ようとするもの。

そういった裏の世界の住人たちから、ライブラのメンバーは大層恨みを買っていた。

そしてそのリーダーであるクラウスは当然、裏の世界ではその名を知らぬ者はいないほど、存在が知れ渡っていたのである。

「私の事を御存知でしたか。ならば話が早い」

相手が裏の世界に通じる者だと知ったクラウスは、迷うことなくアメリアの姿が映ったプリントを父親の眼前に突き付けた。

「この少女について話をうかがいたい」

「……その写真に映ってるヤツが俺の娘だって言いたいのか? 」

父親は声をあげて笑い出す。

対するクラウスは表情ひとつ変えずに父親を見ていた。

「アイツは俺が殺した。生きてるワケがない」

「母親も同じことを口にしていました」

「そりゃそうだろう。あの女にも手伝わせたんだからなぁ」

下卑た笑いを止めない父親に対して、クラウスの目が段々と険しくなっていった。


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