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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第9章 Connecting The Dots



「その教会は孤児院を運営していた。だが、どうやらただの孤児院じゃなかったらしい」

「……まさか“Eden's children(楽園の子供たち)”か……?」

「ご名答」

ダニエル警部補は、即座に答えにたどり着いたスティーブンの顔を指さした。
それを見ていたクラウスの顔は非常に苦いものになった。


──楽園の子供たち、とは。

『楽園』とは名ばかりの、情欲にまみれた大人達によって作り上げられた、子供であることを売りにした売春クラブの事だ。

ギリ、とクラウスは唇を噛み締める。

純真無垢な子供達に対して、そこまで悪逆非道な行いを為せるのか。

姿の見えない敵に対して、クラウスの体からは怒りのオーラが漂い始めていた。

「先の“Angel's liberation(天使解放作戦)”で売春斡旋組織は壊滅させたはずじゃなかったのか」

「残党がいたのか……そうでなくともこの手の輩はぶっ潰してもしばらくすりゃまた別の輩が出てきやがる。“需要”があれば“供給”が立ち上がるのは必然だからな」

ダニエル警部補の言葉は正論だった。
いくらクラウスが否定したくとも、あらがえない事実だ。

しかしまた傷つき苦しむ子供達が生まれてしまっている事に、クラウスの怒りは収まりそうになかった。

「おい、俺を睨むなよボス。……売春が行われていた証拠を示す帳簿も見つかった。
見つかったんだが、顧客の手掛かりはおろか、肝心の子供達に関する情報がねぇんだ。顔写真も、名前すら分からない。

ただ判っているのは、子供達が賛美歌の番号で呼ばれていたことだけだ」

「賛美歌の……」

「No.515、50、539、147、174……全部で12人いたようだ。その番号に意味があるのかどうかまでは分からん」

「それで、その子供達は」

スティーブンの問いにダニエル警部補は首を振った。

「いまだ行方が知れない。教会からは遺体は見つからなかった。おそらく、牧師が死んだことで外に逃げ出したんだろうが……近隣での目撃情報すら無い。まるで煙のように消えちまったのさ」

「“消えた”……こっちもか」

スティーブンが呟く。

「あ?」

ダニエル警部補はスティーブンの発言の意図を読み解こうと視線をスティーブンに向けた。

「いや、こっちの話だ。…それで、俺達にその子供達を探せと?」

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