第9章 Connecting The Dots
周囲の人間も怪訝そうにこちらを見ている。
これ以上少女を問い詰めるには場所が悪い。
そう判断したスティーブンはクラウスにそっと耳打ちした。
(クラウス、彼女を離してやれ。追跡させる)
目で「了承した」と返し、クラウスは少女を解放した。
「怖がらせてしまって申し訳ない、レディ。人違いだったようだ」
クラウスが腕を離すと、少女は一目散に逃げだしていった。
「──ああ、その金髪の少女の後を追ってくれ。よろしく頼む」
スティーブンは素早く近くにいたメンバーに連絡を取り、少女を追跡させた。
「クラウス、まさかとは思うが、他人の空似じゃないだろうな」
クラウスに限って間違いをおかすはずはない、そう思いながらもスティーブンは先ほどの少女の様子から、万が一の可能性を確かめた。
「……見た目はよく似ていた。しかし、纏う雰囲気が少し、違うような気もする。…ドッペルゲンガーというやつだろうか」
「大真面目な顔して冗談を言うのはやめてくれないかクラウス。……本気なのか冗談なのか判断がつかない」
「本気、なのだが」
がくりと、スティーブンは肩の力が抜けた。
「そうかい……ひとまず、警部補の元に向かおう。あまり待たせるとザップが豚箱行きになる」
車に戻り、スティーブンとクラウスは急ぎダニエル警部補の元へ向かった。
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─某所─
「…あんたんとこの銀髪をとっ捕まえに行こうかと思ってたところだぜ」
ダニエル警部補は、顔を合わすなり毒を吐いた。
彼の足元には煙草の吸殻の山が出来ている。
「悪い。少し急用が出来てな。それで、用件は何だい」
「…2週間少し前、教会で牧師と異界人の死体が発見された」
「殺人事件か」
「おそらく。だがアンタ達を呼んだのはそんな事よりもっと重大な話だ」
ひとたび何か騒ぎが起きれば、まるで塵を吹き飛ばすがごとく大勢の命が消えるこの街では、人が1人、2人死んだところでさして大騒ぎするようなことではなかった。
わざわざ呼び出してまでクラウス達に捜査の協力を依頼するのであるから、それが簡単な事件でないのは明白だ。