第9章 Connecting The Dots
「それと顧客、バックにいるであろう斡旋組織もな」
「おいおい、それじゃ全部じゃないか! 君達、警察だろう」
スティーブンは軽く非難の声をあげる。
事件に関する一部分の協力ならばまだしも、これでは事件そのものを解決しろと言われているのと同意だ。
「そうだよ、俺達は警察だ!」
ダニエル警部補は声を荒らげた。
それは己自身の無力さに腹を立てているからに他ならなかった。
このオカルトじみた街の中で、ただの人間が生きていくのは至難の業だ。
けれど何の力も持たない一般市民も、この街では生活している。
そんな彼らを守るため、ダニエル警部補は日夜職務に心血を注いでいる。
本来ならば、クラウス達の力を借りずに警察だけで事件を解決しなければならない。
けれど、それではどうにもならない事が、この街ではまま起こってしまう。
悔しさをにじませながら、ダニエル警部補は言葉を続けた。
「…市民の平和を守るのが、俺達警察の仕事だ。その為にはなりふり構ってらんねぇ時がある。一刻も早く、この“楽園”をぶっ潰さなきゃならん。俺らだけじゃ、どうにもなんねぇんだ。アンタ達の持ってる裏の情報が欲しい」
「──承知した。迅速に対応させていただく」
それまで押し黙って話を聞いていたクラウスが、口を開いた。
事件の内容、そしてさらにはダニエル警部補の情熱が、クラウスの心を熱く揺り動かしていた。
「クラウス、君はまた勝手に……いや、分かってるよ。僕だって見過ごせないさ、この話は」
子供が絡んでいるとなればなおさら、クラウスの正義感は増すだろう。
警察の捜査で何も出てこないとなれば、骨の折れる仕事だということが目に見えているというのに……スティーブンは積み重なっていく仕事に軽く眩暈を覚えた。
(冷静に見えて、意外と直情直結なんだよなぁクラウスって……)
こうしてクラウスとスティーブンは、ミス・アメリアの行方と、教会の事件を追う事になったのだった──。