第9章 Connecting The Dots
「おじさん、誰? なに、急に。あたしアメリアなんて名前じゃないけど」
クラウスがミス・アメリアと呼び止めた少女は、きょとんとした顔でクラウスに答えた。
他人のフリをしてしらを切るつもりなのだろうか。
「私を覚えていないのかね? クラウスだ。クラウス・V・ラインヘルツだ」
クラウスが名乗っても、当の少女は怪訝な顔をするばかりで、その名に全くピンときていないようだった。
次第にクラウスの表情も困惑したものに変わっていく。
「なんなの? 新手のナンパ?? 悪いけどあたしおじさんにはキョーミないから」
掴まれていた腕を振り払い、少女は場を立ち去ろうとする。
「待ち給え。君には確かめなければならない事が──」
「離してよ! ケーサツ呼ぶよ、おじさん!」
「クラウス、本当に彼女で間違いないのか?」
「その、はずだが……」
少女に否定され続け、さすがのクラウスも自信を無くしかけていた。
じっ、とクラウスは記憶の中のミス・アメリアと目の前の少女を見比べる。
記憶の中のミス・アメリアは黒髪だった。
しかし目の前の少女はブロンド。金髪だ。
クラウス達の元から消えたほんの数時間のうちに、金髪に染めたのだろうか。
もうひとつ、記憶の中のミス・アメリアと違ったのは、顔のホクロだ。
目の前の少女は顔にいくつか目立つホクロがある。
特に目元のホクロは、ミス・アメリアには無かったはずだ。
一体どういう事なのか。
別人に成りすまそうとしているにしては、変装が雑すぎる。
素人考えの変装ならばこれくらいが精一杯だろうか。
スティーブンとクラウスの頭は高速で目の前の状況を分析する。
本当に、目の前の少女はミス・アメリアなのだろうか?
「髪の色や目元のホクロは違うが……ミス・アメリアによく似ている。…失礼、レディ。君には姉君か妹君がいないだろうか」
「いないけど……ほんとになんなの? おじさん達、誰なの? 私、アメリアなんて名前の子、知らない……」
少女は怯え始めていた。
2mを越える強面のクラウスと顔に傷のあるスティーブンに詰め寄られていては、少女が怖がるのも無理はない。