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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第9章 Connecting The Dots



体を真っ二つにされたギルベルトの負った傷は、完治するまでにかなりの月日を要するものだった。

しかしそこはヘルサレムズ・ロット。この街には外の世界にはない、裏の、特殊な医療が存在する。

その医療のおかげで、ギルベルトの怪我は普通では考えられないほどの治癒をみせていた。

「ミス・エステヴェスによると2週間は安静にとのことだ」

「相変わらず彼女は凄腕だな。半身に引き裂かれた怪我がたった2週間で済むとは」

「ああ……」

「なんだい、君。もしや自分が車を降りなければ良かったと考えてるのか」

バックミラー越しにクラウスを見ると、彼は沈んだ面持ちで窓の外を眺めている。

「私の注意不足が招いた事だからな。ギルベルトの怪我も、ミス・アメリアの行方が分からなくなったのも。あの場で軽率に二人から離れるべきでは無かった」

スティーブンはため息をついた。

クラウスは、他人の事を想いすぎるところがある。

そしていつまでも自分を責めるきらいもある。

そうして幾度も自責を重ねることで、同じ失敗を繰り返すまいと己を戒めているのだろうが、スティーブンから見れば、クラウスのその性質は単に己を無為に痛めつけているようにしか見えなかった。


「クラウス、君は何でも背負い込みすぎだ。後からならなんとでも言える。その時、君は最善だと思う道を選んだんだ。ギルベルトさんの怪我は確かに災難だったが、ミス・アメリアの事まで思いつめることはないだろう」

「……!スティーブン、止めてくれ!」

「?!」

言われるがまま、スティーブンは車を停めた。

先ほどまで沈んでいたクラウスの表情は一変して、勢いよく車のドアを開けて外へ飛び出していった。

(何があった?)

スティーブンは運転席からクラウスの行方を目で追う。

クラウスは、店から出てきた人物に駆け寄っている。


「ミス・アメリア!」


クラウスの大きな声にスティーブンはまさか、との思いで車から降りてクラウスと少女の元へと急いだ。

探していた少女がこんなに簡単に見つかるとは。
偶然にしては出来すぎていやしないか。

もしかしたらこれも、何かの策略ではないのか。

スティーブンはそんな事を考えながら、二人に近づく。




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