第9章 Connecting The Dots
**********
少女の行方を捜し始めてしばらくしたところで、スティーブンの胸元がブルブルと震えだした。
鳴り響く携帯の着信音に、スティーブンが頭をかく。
「ああなんだってこんな忙しい時に」
着信画面を目にすると、彼は大きなため息をついた。
「──スティーブン。今度は一体何の用だい、ダニエル警部補」
『ああ、いつも悪いな。今ちょっといいか』
「駄目だ」
言ってスティーブンは無情にも会話を終了させようとする。
『おい、待て待て待て!』
スティーブンの指が通話終了のボタンを押しかけた時、携帯からダニエル警部補の大声が響いた。
『いいのか? おたくの銀髪頭しょっ引いても』
ゆっくりとスティーブンの目がザップへと向けられる。
ジロリと睨まれたザップは震えながらスティーブンに土下座する勢いで頭を下げた。
ザップには警察に脅されるような心当たりがあるらしい。
普段からザップの事を度し難いクズのような人間だと思っているスティーブンだったが、今回ほどザップの素行の悪さを恨んだことは無かった。
「──…一度ブチ込んだ方がいいかもしれないな」
「番頭そりゃねぇっすよ!」
「…冗談だ。で、何だ」
『悪いがコレじゃ話せねぇ。いつもんトコに頼むぜ。あんたんとこのボスも一緒にな』
「今からか」
『分かってるじゃねぇか。じゃ、後で』
電話はそこで切れてしまった。
一方的に呼びつけられ、スティーブンの機嫌はあまりよくなかった。
しかし一応メンバーの身柄を盾に取られている以上、無視するわけにもいかない。
「悪い、クラウス。君もご指名がかかった」
「そうか。では行くとしよう」
スティーブンとクラウスは連れ立って、ダニエル警部の待つ場所へと向かった。
*************
「ギルベルトさんの怪我の状態は?」
車の運転席でハンドルを握りながら、スティーブンは後部座席のクラウスに問いかけた。
クラウスと共に事務所に姿を見せなかった彼の執事であるギルベルトは、先の異界人の襲撃によって重傷を負わされていた。
とはいっても、ギルベルトの持つ『再生者(レゲネラトーア)』という体質のおかげで、死は免れていた。
ただその体質は、致命傷を瞬時に回復させるものの、死なない程度まで回復させるだけである。