第9章 Connecting The Dots
「……ちょっと待て、話がきな臭くなってきたぞ。すると、何か、その子はテレポーターだとでも言いたいのかクラウス」
「分からない。ミス・アメリア自身がそうなのか、あるいは他に能力者がいたのか現状判断しかねる」
「その子が現場にいたタイミングと言い、不可解な消え方といい、いかにも“怪しい”な」
列車の事故にしても、今回の騒動にしても。
もっといえば、クラウスと少女が初めて出会った32番街での騒動も。
何か図ったかのように少女はそこにいた。
そのようにスティーブンには感じられた。
「ああ。ミス・アメリアには不審な点がいくつかある。嘘をついているようには見えないのだが、何かを隠している様子だった。先ほどの騒ぎは、ミス・アメリアを狙う誰かが起こしたか、彼女自身があの場から逃げ出すために起こした可能性が考えられる」
「何にせよ、その子に話を聞かないと始まらないわけか」
「そういう事だ」
「分かった。僕の方でもその子の事を探ってみよう」
言って、スティーブンはすぐさまパソコンの前に戻って行った。
「…にしても、なんでこんなに服買ってやる事になったんすか、旦那」
隣でスティーブンとクラウスの話を黙って聞いていたザップが、ようやく口を開いた。
「彼女は、私の怪我の止血の為に自身の服を破いてしまったのだ。これらの洋服はその弁償に購入したものだ」
「それにしちゃ数が多くねぇっすか」
「うむ……ミス・アメリアにも同じ事を言われたな」
クラウスは先ほどまで一緒にいた少女の事を思い浮かべていた。
ホテルで入浴を済ませるなり、突然自分の体を差し出してきたかと思えば、弁償を頑なに拒んだり、何度もお礼の言葉を口にしたり。
彼女の言動はとても丁寧で、けれど時に不自然に後ろめたさを感じているようなところも垣間見えた。
そして何より気になったのは、ギルベルトの淹れた紅茶を、彼女が二度断った事。
どちらも断りの理由としては理解出来るものではあったが、彼女のような終始低姿勢だった人物が『喉が渇いていない』という理由で断るようなことをするだろうか。
終始クラウス達に気を遣っていたあの様子であれば、むしろ無理にでも口をつけるのが自然ではないだろうか。