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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第9章 Connecting The Dots



「ミス・アメリアは、列車事故が起こることを事前に把握していた」

「何だって?」

まだ幾分か吸えるはずのタバコを、スティーブンは勢いよく潰した。
ぐちゃりと潰れたタバコの灰が、灰皿に散らばる。

「彼女は、周囲に避難を呼びかけていた。まもなくここに列車が落ちてくると」

「それで」

スティーブンは急くようにクラウスに話の続きを促す。

それまで煙のような存在だった少女が、スティーブンの中で一気に輪郭を伴った存在になっていく。

ミス・アメリアという少女をクラウスが急いで探す理由。

それがスティーブンにもようやく理解出来つつあった。

その少女は、何らかのキーパーソンだ。
それもどうやら大きな事件の鍵を握っていそうな。


「誰も彼女の言葉を信じてはいなかった。しかし気になった私は、彼女を引き留め話を聞いた。どうにも嘘をついているように見えず、彼女の言うことを信じることにした。そのすぐ後に、列車が脱線して、私達のところまで落ちてきたのだ」

「その少女の言った通りに事故が起きたわけか。となると、列車事故に何らかの関りがあるって事だな。下手するとその子本人が事故を仕掛けたって可能性も」

「可能性としてはある」

クラウスが何か言いたげなのをスティーブンは感じ取っていた。

直接その少女と接していたクラウスにしか分からない何かがあるのかもしれない。
大量のブランド物の服を買い与えるくらいだ。

ミス・アメリアとクラウスの間には何かあったのだと考えるのが自然だ。

「ミス・アメリアが事故を引き起こしたかどうかは分からないが、彼女は何かしら事情を知っている様子だった。本当ならば今頃は彼女をここに連れて来ているはずだったのだが、先ほどの騒ぎの中で行方が分からなくなってしまった。

…彼女とギルベルトの乗っていた車が襲撃を受け、ギルベルトが再生している間に、姿を消したそうだ」

「…姿を、消した? その子の意志で消えたって事か」

「そうじゃない。ギルベルトの目の前で言葉通り、“消えた”のだ」

クラウスの言葉に、スティーブンは眉をひそめた。

“消えた”?

一体どういう事なのか。


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