第9章 Connecting The Dots
「ミス・アメリアに贈ったものなのだが...」
「旦那もしかしてフラれたんすか?!」
吹き出しそうになっているザップを無視して、スティーブンの目が鋭く光った。
「ミス・アメリアって……君がさっき探して欲しいっていった少女かい」
クラウスが頷く。
「順を追って説明してくれるかいクラウス」
「ああ」
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「初めて彼女に会ったのは……スティーブン、そういえば君もミス・アメリアに以前会っている」
「僕も? いつだい?」
タバコを薫せながら、スティーブンは自身の記憶を軽く辿る。
ここ最近で16、7の少女と接した事があっただろうか。
すぐに思いつくところではスティーブンにその記憶はなかった。
「数日前、32番街のあたりで発狂状態の異界人に出会っただろう? 君の血凍術で固めても、自らの体を引きちぎって逃げ出した」
「…ああ」
スティーブンの脳裏に、異様な興奮状態に陥っていた異界人の姿が浮かぶ。
体はおろか首がちぎれてもなおクラウスに襲いかかろうとしていたあの異様な光景。
頭だけになった異界人がクラウスに噛みつこうとしたその時、その頭は血の塊で一瞬のうちに固められてしまった。
(──そうだ、固め“られて”しまったんだ。)
スティーブンが力を使う前に、他の何か、あるいは誰かによって、異界人の頭は動きを封じられていた。
あの時は他に要救護者の存在もあり、深く追求することはなかったが、今になってスティーブンはあの時一体誰があの異界人の動きを止めたのか気になり始めていた。
「あの時、二人襲われかけていただろう。小さな子供をかばっていたのがミス・アメリアだ」
「…うーん……確かに子供がいたような気はするけど……どんな子だったかははっきりと覚えていないなぁ」
確かにクラウスが子供を守る為駆け出して行ったのは覚えている。
しかしその容姿は、クラウスの影になっていたのもあってスティーブンはハッキリと見てはいなかった。
「そうか…。私はその後、今日の列車の脱線事故でも彼女に出会ったのだ」
「へぇ。まぁそういう事もあるだろうが……」