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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第9章 Connecting The Dots



―ライブラ事務所―


事務所の扉が開くと、ソファで寝ていたはずのザップがパチリと目を開けた。

扉を開けた人物が中に足を踏み入れようとした瞬間、ザップは飛び起きてその人物に襲い掛かった。

「スティーブン、チェインは」

クラウスはザップの突然の襲撃も意に介さず、瞬く間にザップを床に転がしてしまった。

「今出てるよ。…急ぎの用かい?」

こちらもいつもの騒ぎだと全く意に介さず、スティーブンは睨みあいをしているパソコンの画面から目を離さずにクラウスに答えた。

「ああ。ある少女を探して欲しい」

「情報は」

「名前はアメリア・サンチェス。…もしかしたら偽名の可能性もある。年の頃は16、7といったところだ。セントレギスの監視カメラに私と一緒に映っている映像があるはずだ」

「分かった。すぐに探させる」

「すまない。携帯を壊してしまってな」

「さっきの騒ぎでだろ。ニュースに君の姿が映っていたよ。
──ああ、チェイン。用件は済んだか? なら都合がいい。ああ、急ぎで頼みたいことがある─……」

胸元のポケットから取り出した携帯で、スティーブンはチェインへアメリアを探す指示を送った後、ようやくパソコンから離れてクラウスに向き直った。

「どうしたんだい、その荷物は」

クラウスは両手に大量のショッピングバックをぶら下げていた。
ショッピングバックには有名ブランドのロゴ。

クラウスが有名ブランドで買い物をしても彼の生活環境からすれば、別段おかしい事ではない。
彼が身に着けているものはハイブランドの物ばかりであるし、口にするものもそれなりに値の張るものが多い。

問題は、そのショッピングバックのデザインがいかにも女性向けの物だという事だった。

「誰かにプレゼントでもするんすか?旦那」

いつの間にか起き上がっていたザップがひょいとバックの中を覗き込む。
中身は不織布に包まれていてはっきりと見えなかったが、おそらく洋服だろう。

それを一つではなく、両手いっぱいにぶら下げているのだから、いったいどういう用途でクラウスが女性物の衣服を持っているのか、ザップでなくとも気になるところだった。


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