第8章 隠れ家にて
エイダンの魂が、安らかに眠れますように。
祈りをこめて、心をこめて歌おう。
それで私の罪が消えることはないけれど。
どうか安らかに。
私は兄さん達に頼み、しばらく一人にしてもらった。
ただエイダンのことを想い、祈りを捧げる時間が欲しかった。
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「随分と長いこと祈っていたね」
部屋から出ると、兄さんが温かい飲み物を差し出してくれた。
兄さんに招かれるまま小さな椅子に腰かける。
「色々あって疲れたろう。飲むといい」
「……ありがとう」
口をつけると、ほのかにはちみつの匂いがした。
温められたミルクにほんのりとはちみつの優しい味が広がる。
「朝から何も口にしていなかったろ? ひとまず食事にしよう」
「……」
確かに朝から飲み物はおろか食べ物も口にしていなかった。
だからお腹はすいているはずなのに、どうにも食事の手は進まなかった。
「駄目よ、食べなきゃ。あんたイアンからもらったものでないと食べられないくせに。今食べないでどうするの」
「リア、そんな風に言うな。あんな事があった後だ、食欲だって失せるさ」
「……そうかもしれないけど。アメリアはもっと図太くならなくちゃ駄目だわ」
リアはそう言って、残された私の分の食事も口に運んでいた。
彼女はとても逞しい。
教会でも、そうだった。
リアと私は同じ日に初めてお客の相手をさせられた。
どうしようもなく落ち込む私とは対照的に、リアは全く気にもしていないかのように平然としていた。
『泣くだけ体力と時間の無駄よ。やることやってれば衣食住の保障はあるんだから。…前と比べたら全然マシだし』
そう彼女が言い放ったのをよく覚えている。
リアの過去に何があったのかは詳しく知らない。私には地獄のようなあの教会での生活がマシだと言えるくらいには、リアのいた環境は酷いものだったのだと想像はつく。
「ねぇ、アメリア。気になってたんだけど、その服どうしたの。随分と高そうな服よね」
最後の一口を頬張って、リアは私の服を指さした。
「……いただいたの」
「そんな高級な服を? 誰に?」
「ミスタ・クラウスよ。以前にも私を助けてくださった方」
リアは首をかしげる。