第8章 隠れ家にて
「大丈夫? グロいとこ見ちゃったんでしょ。ちょっと精神的にきちゃってるんじゃないの」
「ミスタ・ギルベルトは……やっぱり……」
「運転してたおじさんのこと?スパっと半分に切れちゃったってね。イアンもエグイことするよね」
「……リア、あなたどうしてそんな風に言えるの?」
「何が?」
「人が亡くなってるのに、どうしてそんな軽く話せるの」
リアはあの瞬間を目にしていないからかもしれない。
あんな光景をまざまざと見てしまったら、そんな平静な顔で人の死を語ることは出来ないはずだ。
「どうしてって。だって他人だもの」
さらりと答えるリアは、それが当たり前だという顔をしていた。
他人。
確かにそうだけれど。
「たった数時間一緒にいただけの人でしょ? 逆にどうしてそこまで感傷的になれるの? 死ぬとこ目の前で見ちゃったのはそりゃキツイだろうけどさ……でも結局他人じゃん。死のうがどうしようが私達には関係ない」
「人が、亡くなってるのよ?!」
「そうね」
「そうね、ってリア、あなた」
「そのギルベルトって人を悼む前にさ、エイダンの事悼んでやってくれない。あんたを探しに行って、死んだんだからさ」
「えっ……?」
エイダン。
10歳かそこらの、そばかすがチャームポイントの男の子。
私を慕ってくれていて、弟のように可愛がっていた。
あのエイダンが、死んだ──?
「そんな、」
「リア。その話はアメリアがもっと落ち着いてからにしようと言っただろ」
「……ごめん、イアン」
エイダンが、死んだ。
あの笑顔を見ることは、もう出来ないというの。
それも、私を探しに行って死んだって……私が、原因で、死んだ……。
「アメリアのせいじゃない。エイダンは僕たちの制止を振り切って勝手に出て行ってしまったんだ。彼だって、アメリアのこと恨んだりしちゃいないさ。自分の意志で君を探しに行ったんだから。結果、命を落としたとしても……アメリアが気に病むことじゃない」
兄さんの言葉は、その言葉とは裏腹に、私を責めているように聞こえた。
私がすぐに兄さんの元に、みんなの元に戻っていれば、エイダンは死なずに済んだのだと。
「……後で、賛美歌を歌ってやってよ。エイダンは、君の歌声が大好きだった」
「……ええ」