第7章 信頼
これほどまでに利発な女性なら、それなりの環境に身を置いていたと察せられる。
そんな中で、誰も彼女を対等に扱う人間がいなかったとは考えにくい。
どうにも、ミス・アメリアは謎めいた部分が多い。
列車事故と同じく、彼女の謎も、少しずつ解明していく必要があるだろう。
「……話を戻そう。君が避難を呼びかけた、あの列車事故には不可解な点が多い。“脳”のついたあの車両が何も無しに、あのような事故を起こすとは考えにくいのだ。
あの事故には、何らかの──“誰か”の力が働いていると私はみている」
ミス・アメリアの瞬きの回数が明らかに増えた。
人は、緊張した状態に陥ると自然と瞬きの回数が増える。
これは私の発言が、彼女の核心に触れたということを如実に表している。
やはり、“誰か”があの事故を引き起こした。
そして彼女は、その“誰か”を知っている。
一体、誰なのか。
「あの列車事故を引き起こした“誰か”を我々ライブラは看過出来ない。今後もあの事故と同等かそれ以上の事故、事件を引き起こす可能性が否定できないうちは」
「……」
「もし君が何か事情を知っているのであれば、私に話してほしい。たとえ君一人では抱えきれない事だとしても、我々ライブラに任せてもらえれば、必ず解決してみせる」
そう言い切った私の顔をミス・アメリアはじっと見つめてくる。
それまでゆらゆらと不安げに揺れていた瞳は、いまではしっかりと私を見据えていた。
「……ミスタ・クラウス、」
彼女がようやく口を開きかけた時、車外から悲鳴が上がった。