第6章 The Lady is Cinderella.
「アメリア様、クラウス様もああ仰られていますし。わたくしとしても、まだまだお似合いのお召し物を提案させていただきたいと思っておりますの」
にっこりと、ミス・レイチェルが微笑む。
その笑顔とは裏腹に、がっしりと私の肩を掴む手には、結構な力が込められている。
獲物を逃がすまいとしている肉食獣のようで、私はまたミスタ・クラウスとミス・レイチェルの圧に負けて、再び着せ替え人形へと変化した。
「こちらの小花柄のワンピースなど非常にお似合いで」
「なるほど、優しい雰囲気がミス・アメリアにぴったりだ。それではこちらもいただこう」
「思い切って明るいお色味はいかがでしょう。アメリア様の若々しさが際立ちます」
「大ぶりのリボンも可愛らしいものだな。それもいただこう」
「こういったクラシカルなデザインもよくお似合いです」
「うむ。私も好みのデザインだ。ではこちらも」
……私が口を挟む隙はなかった。
ミスタ・クラウスとミス・レイチェルのお二人で会話はすすみ、あれよあれよという間に、私の隣にはいくつものショッピングバッグが置かれていく。
ちょっとお待ちください。
確かにミスタ・クラウスは、あの列車の事故の時から一貫して『服の弁償を』と仰ってはいましたが。
弁償にしては、これはいささか行き過ぎではありませんか──???
という、私の気持ちが顔に表れているのを見て取られたのか、ミスタ・クラウスは事も無げに仰った。
「気にすることはない。まだ足りないくらいだ」
ま だ 足 り な い
嘘でしょう。
どうか、嘘と仰って。
私とは住む世界が、考え方が違う方だと思ってはいたけれど、あまりにも私の感覚とはかけ離れていて、頭がクラクラしてきそう。
「……ミスタ・クラウス」
「何かね?」
「これは、過剰です。私の体は一つです。一着あれば十分なのです」
「しかし」
また、ミスタ・クラウスが変に頑固なところを見せようとする。
この方は、自分がこうだと決めたら、それを曲げるのをよしとしないところがおありのよう。
けれど、それはこちらの意向を全く無視するのと同じ。
私は半ば脅しに近い言葉を吐いた。
「ここまでされては、私はまた脱がなければならなくなります!」