第6章 The Lady is Cinderella.
「クラウス様、本日は格別のお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます。クラウス様、そしてアメリア様のご要望にお応え出来ますよう、当百貨店の中でも選りすぐりの物をお持ちいたしました」
「急な呼び立てに応じていただき、感謝している。早速、見せていただこう」
「かしこまりました。アメリア様、本日は貴方様を輝かせるのに相応しいお召し物を共に探すお手伝いをさせていただきます。わたくし、レイチェルと申します。どうぞよろしくお願い致します」
ミス・レイチェルは真っ赤な口紅が塗られた美しい唇で、流れるように話された。
あまりにもスムーズな話の流れに、私一人だけついていけていない気がする。
困惑した表情のまま、ミスタ・クラウスに視線を送った。
「あ、あの、ミスタ・クラウス? これは一体どういう事でしょう?」
「どれでも好きなものを選びたまえ。いくつでも構わない。君が気に入ったものは全て進呈しよう」
「いえ、そういう事ではなくてですね。どうして私に服を……?」
「君の服の弁償を、と思っているのだが……あまり好みでは無かったかね? 一応、君くらいの年頃の女性に人気のあるブランドを選んだつもりなのだが」
「とても素晴らしいお洋服ばかりです。ですが、私には身に余るほど高価なものです。とてもではありませんが、受け取れません」
一目見ただけで分かる、高級そうな質感のお洋服。
デザインも、そうまるでミスタ・クラウスのような身分の方が着るにふさわしい、洗練されたデザイン。
とてもじゃないけれど、この服を着て街を歩く勇気はない。
服に着られてしまうのが目に見えている。
私には、相応しくない。
「まぁ…そう仰らず。アメリア様、一度ご試着されてみてはいかがでしょう。カジュアルなデザインの物もご用意しておりますので、是非。ご試着されると案外しっくりくるものがおありだと思いますよ」
「どうか一度試していただけないだろうか、ミス・アメリア。どうしても気にいるものが無ければ、他のブランドのものを取り寄せよう」
ジリジリと笑顔のままミス・レイチェルはにじり寄ってくるし、ミスタ・クラウスはじっとこちらを見て圧をかけていらっしゃるしで、先に根負けしたのは私の方だった。
先ほど紅茶を断った罪悪感もある。