第6章 The Lady is Cinderella.
でもまさか、思わないでしょう?
なんの下心も無しに、見ず知らずの私にここまでしてくださるなんて。
だけどどうやら目の前の紳士は、本当に何も下心も無しに他人にここまで情けをかけられるお方のようだった。
「……不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません」
その気がないのなら、私の裸を見せられたって迷惑以外の何物でもないだろう。
先ほどまでの自分の考えが大層な自意識過剰で思いあがった考えだったと分かり、一気に恥ずかしさがこみあげてきた。
これでは、私はただの痴女だ。
もしかしたら、公爵様に言い寄ろうと画策した浅はかな女だと思われているかもしれない。
気まずさに、下を向いた顔を上げられなくなった。
まともにミスタ・クラウスの顔を見ることが出来ない。
「いや……私の配慮が足りなかった。詳細な説明も無しに、勝手にここまで連れてきてしまった私の責任だ。君に変に気遣いをさせてしまって、すまなかった」
私は床を見つめたままだったけれど、ミスタ・クラウスが私に頭を下げたのが分かった。
彼が頭を下げる理由なんて、ひとつもないのに。
むしろ謝られると余計に自分の浅はかな考えが恥ずかしくなる。
「あの、勝手に勘違いをしたのは私ですから! ミスタ・クラウスの善意を信じ切れずに浅はかな行動を取った私が悪いのです」
「そんな事はない。私が……」
私もミスタ・クラウスも、お互い謝り続けて譲らなかった。
そうだった。
この方は頑固なところがおありなのだった。
私が折れるまで、きっとこの方は折れない。
「坊ちゃま、アメリア様。ひとまず紅茶をお召し上がりになりませんか」
永遠に続きそうな私達の謝罪のやり取りに、ミスタ・ギルベルトが口を挟まれた。
ミスタ・ギルベルトは慣れた手つきでテーブルに紅茶とお菓子をセッティングしていく。
金の縁取りがされた小花の描かれた美しいカップの中に、透き通った鮮紅色の液体が注がれる。
「うむ……では、頂くとしよう。ミス・アメリア、どうぞこちらへ」
ミスタ・クラウスが隣に腰かけるように手招きをなさった。
さっきの今で、どんな顔をしてお隣に座ればよいというのか。
それに、私は……。
「あ……いえ、私は……」
躊躇する私に、お二人とも不思議そうな顔をされる。