第6章 The Lady is Cinderella.
「一体、どうすれば……」
途方に暮れる私に、空模様まであやしくなる。
ポツリポツリと降り出した小さな雨粒は、やがて大きな雨粒に変わっていった。
道行く人々が一斉に駆け出す。
その波にのまれて、私もあてどなく駆け出した。
傘も何もない。お金だって持っていない。
雨宿りを兼ねてあちこちの店に入っていく人を真似ようかと思ったものの、入ろうとした店は運悪く高級店だったらしく、入り口で止められてしまった。
店の人は私の恰好を一瞥して、「お引き取りください」と静かに言った。
店のショーウィンドウに映った自分の姿を見て、それもそうだと1人納得する。
ずぶ濡れで、どことなく薄汚れた肌。
そして何より裾が引きちぎれてボロボロのスカート。
こんな格好では、受け入れてくれるはずもない。
仕方なくトボトボと街中を歩き、ようやく雨宿り出来そうな店の軒先へ身を寄せた。
頭から足の先まですっかりずぶ濡れになった体は、冷え切っている。
自分の体をさすってみるものの、温まりそうにはない。
けれどじっとしているのは辛くて、ひたすら体を抱えて腕をさすり続けた。
「……いい匂い」
ぐぅ、とお腹が鳴る。
そういえば、今日はまだ何も口にしていない。
朝、出かける兄さんを追って、駅まで黙々と歩いて。
それから事故を止めるためにあちこち走り回って、叫んで。
その上どこかもよく分からない場所までトボトボ歩き回れば、お腹もすくはず。
寄りかかっていた窓をのぞくと、温かそうな食事を家族が笑顔でとっている。
小さな子供が、母親に冷ましてもらったスープを一口もらい、嬉しそうに微笑む。
その姿を見て、母親も、そして隣に座っている父親も、優しい笑顔を浮かべている。
──羨ましい。
そんな気持ちが、顔に出てしまっていたのだろうか。
目があった母親は急に不機嫌な顔になり、父親に何か話している。
父親は店員を呼び、少ししてその家族の席にやって来た店員は、窓の外の私を見るなり、怖い顔で睨みつけてきた。
私、何か悪い事をしたのかしら。
キィ、とお店のドアが開くと、中から怖い顔の店員が出てくる。
私のそばまで来ると、店員の男性は怖い顔のまま言った。
「あんたね、営業妨害なんだよ」
「あ……ごめんなさい」