第5章 運命の歯車
──どうすればいい。
どうすればこれから起こる大惨事を止めることが出来る?
ホームには駅員の姿は無い。
どうにかして、誰かにこの事実を伝えなければ。
私はひとまず改札へと向かい、そこにいる駅員へ事情を伝えようと試みた。
改札の近くにあった切符を買うためのブースの中に、駅員の姿が見えた。
ドンドンとそのブースの窓を叩くと、中の眼鏡をかけた駅員がうるさそうに顔をあげた。
「あの! 今出た列車を止めてください!!」
「はぁ? 忘れ物か何かですか? それでしたら、先の駅に連絡しますので……」
「違うんです! あのまま走らせては、事故を起こします!!」
「事故? はは、ご冗談を。あの車両にはきちんと“脳”がついておりますから」
眼鏡の駅員は、私の話をまったく本気に受け取ろうとしない。
突然やってきた子供が喚き散らしたところで、いたずらか冗談だと思ったのだろう。
たとえ兄の力の話をしたところで、この駅員は質の悪いいたずらだと一笑に付すに違いない。
「とにかく、列車を止めるよう連絡してください!!!」
それだけ叫んで、もう駅員の返事は聞かずに、私は他に助けを求めて地上へと駆けあがった。