第26章 Cinderella Dream
「クラウス様、いかがです。一段とお綺麗になられたでしょう?」
「ああ。これほどまでに美しいレディを目にしたのは初めてだ」
「大袈裟すぎます、クラウスさん」
「世辞ではなく本心だ」
クラウスさんの真剣な眼差しに、彼が本当の事を口にしているのだと悟った。
目は口程に物を言うとはよく言ったものだ。
言葉にすれば本当に大袈裟で、言い過ぎにも思えるけれど、クラウスさんの目は真実を語っている。
「世辞の類は苦手なのだ。女性に対しては特に。アメリア、君はとても美しい。絵画から抜け出したプリンセスのようだ」
クラウスさんは滔々と賛辞の言葉を並べていく。
それがあまりにも自分には過剰すぎる言葉に思え、段々と恥ずかしくなっていった。
言い過ぎです、とこぼせばその何倍もの賛辞が返ってくる。
一言でも褒めてほしいと思った私の欲求はもう満たされていたけれど、クラウスさんの賛辞は止むことがなかった。
彼の元々の性格なのか、育ってきた環境がそうさせるのか。惜しみない称賛の言葉は私の顔を真っ赤にさせた。
俯いたまま何も言えなくなってしまった私を見て満足したようにクラウスさんは微笑んでいた。
「レディ、どうぞお手を」
そう言って差し出された大きな手。
初めてクラウスさんに出会ったあの日、同じように差し出された頼もしく力強い手が脳裏に浮かんだ。
あの時と同じようにそっと優しく私の手をつつみ、履きなれないヒールの私を気遣うようにゆっくりと歩み始める。
「ありがとうございました、ミス・レイチェル」
「どうぞ素敵な一日をお過ごしくださいませ。最後にアメリア様、こちらをどうぞお受け取り下さい」
ミス・レイチェルはそう言って私の手首に何やらはめてくれた。中央にルビーのように赤く輝く石がはめこまれた腕輪だ。
「このバングルは私からのささやかな贈り物でございます。今日の日が特別な一日となりますよう」
ありがとうございますと素直に受け取ってしまってよいのか分からずクラウスさんに視線を送ると、軽い頷きが返ってきた。
「ありがとうございます。大切にします」
素敵な贈り物を手にし、私達は店を出た。