第26章 Cinderella Dream
「アメリア様。私にも経験があるのでお気持ちは痛いほどよく分かるつもりです。…貴方様と同じ年の頃の私は、同じように自分に自信を持てずにいました」
にわかには信じられない話だった。
だって隣に立っているミス・レイチェルは同性の私から見ても綺麗で凛とした立ち姿は自信に満ち溢れていたから。
けれど、彼女が語ってくれた過去のミス・レイチェルは、とても同一人物とは思えないほど引っ込み思案で後ろ向きな性格だった。
「昔の私は今よりふくよかな体形をしていまして、容姿をからかわれて次第に学校に行けなくなってしまったのです。
そんなある時、姉に連れられて姉の友人が働く洋服屋に行きました。
その店で売られていた服は当時の私では選ばないような派手な服ばかりで。露出も多く、太い手足をさらけ出したくないと思いました。
ですが半ば強引に着せられて、鏡に映った自分の姿を見たら……不思議な話ですが、自分がとても可愛く見えたのです。姉も友人も私を美しい、可愛いと褒めてくれて……ありのままの自分でも装い次第で可愛くなれるのだと、姉とその友人が気付かせてくれたのです」
ミス・レイチェルの声は少しだけ震えているように聞こえた。
彼女の真剣な眼差しに、こちらの目頭まで熱くなってくる。
「だから私はこの仕事に就きました。どんなお客様もその方にしかない魅力をお持ちです。私共の仕事はお客様の魅力を引き出すことはもちろん、何より“自信”をつけるお手伝いだと考えております。
アメリア様、この私を信じてくださいませ。貴方様はもう十分に魅力的な女性でいらっしゃいます」
その言葉が私に魔法をかけてくれたようだった。
もう一度鏡に映った自分の姿を見た時には、先ほどまでの不安な気持ちは薄れていた。
背筋を伸ばして、前を向く。
たったそれだけでもドレスに着られていた私は影をひそめた。
「ありがとうございます、ミス・レイチェル」
「恐れ入ります。さぁアメリア様、まだまだお支度はこれからでございます!」
ミス・レイチェルの明るい声に押されるようにしてアクセサリーにバッグ、靴を選んでいき、それが終わると今度は照明で明るく照らされた大きな鏡のある部屋へと通された。
腰に様々な道具の入ったポケットをつけた人がやってくると、私の顔をじっと見つめてあちこちから道具を引っ張り出し始めた。