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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第26章 Cinderella Dream


 このところギクシャクしていた二人の間の空気も、今日はいささか和やかなものになっている。
やはり外出はストレス解消の良い手段になり得るのだと、クラウスは一人再認識していた。

「本来ならば、君の行きたい場所に行けるのが理想なのだが」

今度はアメリアがクラウスの言葉に首を振った。

「場所はどこだって良いのです。さっきも言いましたが、私、クラウスさんと出かけられるならどこに行ったって嬉しいんです」

アメリアの言葉はあまりにも真っ直ぐだった。
これまでクラウスに対して好意を向けてくることは多少なりともあったものの、今日のようにストレートに言葉に出してくることはそう無かったようにクラウスは感じていた。

「そう言ってもらえると助かるが……次出かける時は君の行きたい場所に連れて行こう。どこか希望の場所はあるかね?」
「えっ……希望の場所、ですか」
「ああ。君が行きたいと思うところならばどこだって構わない」
「……」

アメリアは驚いた顔のまま固まってしまった。
クラウスの言葉を全く予期していなかったようで、なんと言っていいのか分からない様子だった。
固まってしまったアメリアを見てクラウスは、ハッと気が付いた。

(アメリアは教会以外の場所をほとんど知らない……どこへ行きたいかと問われても、答えられないのだな……)

「すまない、配慮に欠けた発言だった」
「え…? ああ、いえ、違うんです」

アメリアは首を振って少しはにかみながら、言葉を続ける。

「私は外の世界の事を知らないから、どこへ行きたいとかって言えませんけど…そういうんじゃなくって…その、クラウスさんはこれっきりで済ませるつもりはないんだなって思ったら、嬉しくて」
「君には窮屈な思いをさせ続けているからな。今日の外出くらいでは到底足りないだろう」
「そんな事ありません。ありませんけど…また一緒にお出かけが出来たら嬉しいです。……出来れば、教会の事が解決した後も…」
「君が望むならどこへでも付き合おう」
「…ありがとうございます」

(私が望むなら、か。──貴方自身が望んでくれることはないのでしょうか、クラウスさん)

その想いを口にすることはアメリアには出来なかった。
小さな針が胸に刺さったような痛みと共に、唇を噛み締めてその想いをアメリアはぐっと飲み込んだ。

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